サービスマネジメント(Service Management)は、顧客に価値を提供するための組織的なアプローチであり、ITIL 4においては「サービス、顧客、価値」といった基本概念が中心的な役割を果たします。以下に、それぞれの概念を詳しく説明します。
サービスマネジメントの基本概念
1. サービス(Service)
「顧客に価値を提供する手段として、成果の実現を支援し、顧客が負担すべき特定のコストやリスクを軽減するもの」
例:
- クラウドストレージサービス → 顧客はデータ保管のインフラや管理を気にせずに、ファイルを安全に保存・共有できる。
特徴:
- 顧客にとっての**望ましい成果(Desired outcomes)**を支援する。
- 顧客が直接管理したくない、またはできない要素をサービス提供者が代行する。
2. 顧客(Customer)
サービスの利用者またはサービスに対して支払いを行う組織または個人
顧客の種類:
- サービス利用者(Service User):サービスを実際に使用する人
- サービス購買者(Service Buyer):契約や支払いを行う人(必ずしも利用者ではない)
重要ポイント:
- 顧客はサービスの「価値受益者」。
- 顧客の期待とニーズを理解することが、良いサービス提供の前提。
3. 価値(Value)
サービスが顧客にもたらす便益と満足感の組み合わせ
価値の構成要素(ITIL 4の視点):
要素 | 説明 |
---|---|
成果(Outcomes) | 顧客が達成したい目的や結果(例:安全にデータを保存したい) |
コスト削減(Cost) | 顧客が自ら投資する必要のある費用の削減 |
リスク軽減(Risk) | 顧客が負うべき不確実性や失敗の可能性の軽減 |
体験(Experience) | サービスの利用を通じた感覚・満足度(例:使いやすさ、信頼性) |
ポイント:
- 価値はサービス提供者だけでなく、顧客と共同で創出される(**共創(co-creation)**の考え方)
- 単なる機能の提供ではなく、期待と満足のバランスが重要
4. サービス提供とサービス消費
ITIL 4では、サービスの関係性を以下のように定義しています:
役割 | 説明 |
---|---|
サービスプロバイダ | サービスを設計・提供・運用する組織(例:IT部門) |
サービスコンシューマ | サービスを使用する側(例:営業部門や外部顧客) |
サービス関係(Service Relationship) | 提供と消費の間で発生する協力や合意 |
補足:ITIL 4で重視される他の概念
◽ サービスリレーションシップ・マネジメント(SRM)
- 顧客との信頼関係・協業の強化を目的とする活動全般。
◽ サービスバリューチェーン(Service Value Chain)
- 顧客価値を生み出すための一連の活動プロセス(例:設計、構築、提供、改善)
まとめ:基本概念の相互関係
サービス → 顧客に価値を提供する手段
顧客 → サービスを使い、価値を得る存在
価値 → 成果+体験+コスト/リスクの軽減
サービスマネジメントの本質は、顧客との信頼関係を構築しながら、価値を共に創出する仕組みを作ることにあります。
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